こぼればなし(『図書』2017年2月号)

こぼればなし

 先月の新年号から本誌の「顔」が新しくなりましたが、小社の「顔」ともいえるHPもまた、昨年の一二月にリニューアルされました。グリーンを基調とした新しい「顔」は、シンプルで、使いやすさも向上したものになりました。
 スマートフォンやタブレット端末にも対応しています。さまざまな情報発信を図るとともに、検索機能も充実させ、読者のみなさんの本へのアクセスからご購入まで、いままで以上にサポート機能を高めたものになりました。ぜひ一度、覗いてみていただければと思います。
 とはいえ、本の情報を得るということであれば、やはり紙媒体どうし。書評欄をはじめとする各紙誌の記事や広告、また本誌のような各社のPR誌を主な情報源にされている方も多いことでしょう。しかし、どうやら流れは変わりつつあるようです。
 電通がまとめた「二〇一五年 日本の広告費」によると、総広告費は六兆一七一〇億円で、対前年一〇〇・三パーセントの伸びを示し、四年連続でプラス成長となっています。しかし、媒体別にみると、「新聞広告費」「雑誌広告費」「ラジオ広告費」「テレビメディア広告費」のいずれもが前年比マイナス。この四つを合計した「マスコミ四媒体広告費」は、九七・六パーセントになっています。
 では、なにが総広告費の成長を支えたのか。それは、一一〇・二パーセントと伸びた「インターネット広告費」でした。紙媒体だけでなく、TVやラジオなど旧来型のメディアでの広告からインターネット広告へのシフトにともなって、ネットでの情報発信力が今後ますます大きくなってゆくのが趨勢のようです。
 たしかにネットの即応性や利便性は紙媒体に比較して格段に優れています。書名や著者名をスマホに入力すれば、ピンポイントで必要な情報にアクセスでき、即購入も可能です。一方、実際に書店へ足を運んでも目的の本をみつけられず、在庫情報とその所在を教えてくれる端末機器のお世話になることもしばしばです。毎年八万点前後の新刊書籍が刊行される市場のことを考えれば、ネットは有効に使われるべきでしょう。
 しかし、その効用を認めながらも寂しさを感じないわけではありません。当初の目的とは異なる本に魅かれ、我知らず手に取る、やはり買うべきだったかと後ろ髪を引かれる思いで書店をあとにする……店頭で起こる、思いがけない本との出会いは、そのようなものでしょう。
 これまでの購入履歴や検索傾向に基づいた「おススメの本」がネットでも表示されます。けれども、その「おススメ」は、偶然がもたらす本との出会いとは異なるものでしょう。そうした違和感を超えて、いつかネットの世界でも、店頭で得られるのと同じような経験ができる日がくるのでしょうか。
 本誌連載の斎藤美奈子さん「文庫解説を読む」が、『文庫解説ワンダーランド』と題し、先月、岩波新書として刊行されました。装いを新たにまとめられた一書で、あらためてお愉しみください。

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