執筆者からのメッセージ(『世界』2017年4月号)

原発事故7年目に問われる「復興」

 

 東京電力福島第一原子力発電所の事故による「総」避難者数が、どこにも把握されていないことをご存知だろうか。政府は、年間20ミリシーベルトという線引きで、避難の指示を出したが、その線引きより外、つまり避難指示区域外避難者(いわゆる自主避難者)も数多く発生した。その「正確な」人数は、一度も把握されていない。復興庁が毎月発表しているものは限定的で不完全だ。

 そして、とうとう福島県からの区域外避難者の借上住宅の打ち切りも1カ月後に迫る。「被害」の一断面を直接的に示す「避難者数」は矮小化されたまま、「復興」に消されてゆく。

 政府が正確に把握しようとしない「被害」と「数」に、色と、匂いと、温度を添えたい。そのために「人の言葉」を一つでも多く伝えたいと思う。《明日のわたしの話》として。

吉田千亜(フリーライター)

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