執筆者からのメッセージ(『世界』2017年6月号)

 「文一道」でゆく――憲法大臣・金森徳次郎の議会答弁

 金森徳次郎(1886―1959)の帝国議会での答弁に興味を持ったのは、むろん第一次吉田内閣の国務大臣として、彼が日本国憲法の制定担当を担ったからである。

 金森なくして新憲法はありえなかったとまでいわれる。憲法施行70年の今、その答弁を今いちど、おさらいしておく意義はあろうと考えたためである。

 同時に金森は戦前の法制局長官であった。1935年の天皇機関説事件に巻き込まれて、退官に追い込まれてしまった人物でもある。有力な学説を政治が排除してしまうという異常事態であった。「反知性主義」が「知性主義」を駆逐したのである。やがて政府により国体明徴声明が出され、思想統制にも乗り出した。亡国までたった10年である。

 安倍政権の現代、愛国心教育や国旗・国家の強制、なんと教育勅語まで肯定の兆しがある。今こそ、憲法を考えないと、悪夢の戦前が取り戻される危機があろうと思う。

桐山桂一(東京新聞)

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