この暴走を止められるのはだれなのか

『日本はなぜ核を手放せないのか――「非核」の死角

(太田 昌克 著)

 唯一の戦争被爆国でありながら,先の国連核兵器禁止条約に賛成しないどころか,採択の会議に出席すらしない日本.世界を震撼させた東電の福島原発の事故から何も学ばず,自分たちで勝手に決めた都合のよい安全基準に「合格」のハンコを押して原発再稼働にひた走る日本.「非核3原則」をお題目のように唱えているだけで,「あなたはどこの首相か」と被爆者らに詰め寄られる日本の首相.あのフランスですら,前オランド政権は,脱原発へ舵を切ったというのに(2015年に「エネルギー転換法」が成立.マクロン政権もその政策は引き継ぐという).
 北朝鮮の核の脅威とか,日米の信頼関係を強固にするためとか,資源に乏しい日本での安定したエネルギー供給のためとか,いろいろと日本の政府は言い訳をしてきた.しかし,それらがすべて欺瞞に満ちたものであることが明らかになりつつある.はたして,その理由は何なのか.それは今に始まったことではなく,戦後の日米関係の深い闇を明らかにしないと見えてこないものがある.

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 核禁止条約の1991年のソ連崩壊に伴い突如として核保有国になったカザフスタン.しかし,大統領となったナザルバエフはほどなく核の放棄を決断する.ロシアほか,まわりには核をもつ国,あるいは核を持ちたいと思っている国が多いにもかかわらず,なぜそのような選択ができたのか.そんな素朴な質問を時のカザフスタンの外相にぶつけるところから始まる太田昌克氏の本は,深い闇である戦後の日本の支配層の思惑を見事に暴く.一見,原子力の平和利用(原発など)と核兵器は別問題のように見えるが,それが一体のものとして,政策として選択されてきたこともよくわかる.
 すでに日本の原発からつくられた核兵器6000発分に相当するプルトニウム.民生利用という条件で,プルトニウム保有を認められてきた「日米原子力協定」も2018年で30年の効力が切れる.六ヶ所村の再生工場の実働が危ぶまれ,すでに破綻した「もんじゅ」に後継を求めるのは幻想と言われるなか,その瞬間は刻々と迫っている.太田氏の近著『偽装の被爆国――核を捨てられない日本と合わせて読まれたい.

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