一体この国はどこへ行くのか。5月15日夕方、安倍晋三首相の記者会見をテレビで見ていて、私も「あごが外れるほどの驚き」を覚えました。母親や子どもが米艦に乗るというあり得ない想定のイラストを使って、「見捨てるのか」といった情緒的な言葉を頻出させる首相。それ以上に驚いたのは、NHKの女性解説委員が、「安倍総理大臣は行使を容認する場合でも限定的なものにとどめる意向で、こうした姿勢をにじませ、国民の不安や疑念を払拭すると同時に、日本の平和と安全を守るための法整備の必要性、重要性を伝えたかったのだと思います」と"インベッド解説"でフォローしたことです。

 では、集団的自衛権は「限定行使」ならOKなのか。『読売』や『産経』の世論調査によると、7割の国民が「限定行使」に賛成しているとされています。しかし、政府が半世紀以上にわたって採用してきた「自衛のための必要最小限度の実力」は「自衛力」であって、憲法9条2項が禁止する「戦力」にあたらないという解釈は、論理必然的に、集団的自衛権の行使の違憲解釈と結びつきます。それを安倍政権は閣議決定で覆そうとしています。強引にやろうとすればするほど、論理の破綻が随所に生まれています。

 本稿は、安倍首相が依拠する「安保法制懇」の報告書が恣意的なデータ操作、無謀な論理、意図的な問題のすり替えなどで組み立てられていることを明らかにするとともに、この報告書の目指す方向が、この国の平和と安全をいかに危うくするものであるかを一つひとつ検証していきます。「限定行使ならいいのでは」と簡単に結論を出してしまう前に、まずは立ち止まって考えてほしい。そういう思いを込めて情報をたくさん入れました。是非、通してお読みください。 なお、101頁下段4行目の「ホルムズ海峡は」は、「ホルムズ海峡の最狭部は」に修正します。

水島朝穂 (早稲田大学)

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