新世界事情

世界化するパレスチナ/イスラエル紛争

増悪と対立が激化している中東.そこに働く政治的文化的力学をめぐって,9.11事件後の地政学を読み解く.

世界化するパレスチナ/イスラエル紛争
著者 臼杵 陽
ジャンル 書籍 > 単行本 > 政治
シリーズ 新世界事情
刊行日 2004/05/27
ISBN 9784000270281
Cコード 0331
体裁 B6 ・ 上製 ・ カバー ・ 162頁
在庫 品切れ
パレスチナ問題からアラブ/イスラエル紛争へ,中東イスラーム世界/アメリカ=イスラエルの「文明の衝突」へ.植民地主義,宗教,民族,ディアスポラ・コミュニティをめぐる分断線が,中東に深い亀裂を刻み,増悪と対立が激化している.そこに働く政治的文化的力学をめぐって,9.11事件後の中東の地政学を読み解く.


■著者からのメッセージ
 本書ではパレスチナ/イスラエル紛争をグローバル/ローカルの文脈に位置づけて「世界化」をキーワードに考えていくものである.「パレスチナ/イスラエル」という二項対立に封じ込められてがんじがらめになっている,一つの土地をめぐる占有の歴史に抗い,パレスチナ/イスラエルの歴史の記憶を独占しようとするような知のあり方に抗い,さらにパレスチナ人アイデンティティやイスラエル人アイデンティティという時間と空間をめぐる記憶の民族的な固定化にも抗っていく.それらの抵抗のためのマッピングを示してみたい.
 したがって「パレスチナ/イスラエル」という〈地域〉は,地理的境界をもつ領域ではなく,語り手がそれぞれ思い入れを込めている政治的な言説が交錯し,相互の記憶が接触するメタフォリカルな境界をもつ時空間として分節化された,エドワード・サイードが呼ぶところの「心象地理」的な概念として本書では使用されている.いくつかの言説のせめぎあいが織り成す「紛争」の構図そのものを脱構築し,「紛争」構造を成立させている味方-敵,あるいは自己集団-他者集団が相互の境界を曖昧にしていくなかで,新たな自他の関係性を築く営為を見出していくことが本論全体を貫く問題の核心なのである.
(「序章」より)
臼杵 陽(うすき・あきら)
1956年,大分県生まれ.東京外国語大学アラビア語学科卒業,東京大学大学院国際関係論博士課程単位取得,在ヨルダン日本大使館専門調査員,佐賀大学講師・助教授,エルサレム・ヘブライ大学トルーマン平和研究所およびベン・ツヴィ研究所客員研究員を経て,現在,国立民族学博物館・地域研究企画交流センター教授.
著書に『イスラムの近代を読みなおす』(毎日新聞社),『中東和平への道』(世界史リブレット,山川出版社),『見えざるユダヤ人――イスラエルの〈東洋〉』(平凡社),『原理主義』(岩波書店)などがある.

書評情報

週刊朝日 2005年2月4日号
東京新聞(朝刊) 2004年9月12日
東京新聞(朝刊) 2004年9月5日
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